シャクジの森で〜青龍の涙〜

店先で真剣に見ているエミリーに気付き、中から女主人が出てきた。



「いらっしゃいませ。こちらが気になりますか?」

「こんにちは。とても綺麗で見惚れていました。間違えたらごめんなさい。これは、雪の結晶ですか?」

「はい、そうで御座います。“雪花”ですわ。よくご覧になられますと、リース一つ一つに、違う形のものが付けてありますのよ」



名前もあるのです。

と、女主人は他店の店先にあるリースを示し、あちらの模様は“幅広六花”あちらは“広幅十二花”と順に説明していき、最後に、私はこちらの“樹枝状六花”の形が好きですの、と締めた。



「中には、結晶を模した可愛い小物やアクセサリーがたくさんありますわ。ご覧になりませんか?そちらにお控えのお嬢様方にお似合いの物がたくさん御座います。どうぞ」



にっこり笑顔で薦められてちらっと見れば、店内には若い娘向けの小物がたくさん置いてあるようだった。

もしもアランがここにいれば、“君は持たぬ方が良い”と、渋いお顔で言われそうな品物ばかりだ。

けれど――――



「まあ、本当ですか!?」

「是非、見たいですわ」



と嬉しそうに言うメイとナミの声を聞いたのもある。

が、抑えきれずにむくむくとわき上がるエミリーの買い物欲により、二つ返事で中に入ることを決めた。



「はい、是非。お邪魔します」



声高らかに言えば、シリウスが「むぅ・・・」と珍しくも唸り声をあげるのが聞こえた。

シャルルを兵にあずけて一歩入れば、「まあ、なんて可愛いのでしょう!」の声と一緒に6個の瞳がキラキラと輝く。

右も左も床から天井までも、可愛い小物がこれでもか!というくらいにたくさんディスプレイされている。



「あなたたちも、自由に見て、好きなものを買うといいわ」



エミリーはメイとナミに許可を出し、自身も探し始めた。

お留守番している皆の顔が浮かんでは消えていく。

料理長にフランクにモルト。それにサリーと、それからパトリックにも。皆にお土産をあげたい。



「男性でも女性でも良いものって、何かしら?」



エミリーがぽつりと呟くと、女主人が商品を持ってきた。



「こちらなどいかがですか?」



シンプルだけれど雪花の模様が入っている奇麗なガラス製のマドラー。

種類も数もたくさんあって、お土産にはぴったりに思えた。

エミリーはそれに決め、一つ一つ包んでもらうよう頼んだ。



「お客様は、祭りを見学していかれますか?」

「えぇ、滞在中にあれば見たいと思っています。とても楽しそうですもの。あの・・・気になったのですけど、リースには、雪花の後ろに四角い花がありました。あれは何か意味があるのですか?」



雪花は、泉にあるお花が元になっていそうだけれど、あのアジサイに似た花は何なのだろうか。