「あ・・・フランクさん、すみません・・どうぞ」
慌ててガーゼを準備してぶっきらぼうに渡すリードに、シリウスの瞳がギラリと光り睨みを効かせれば、びくんと体を震わしてバババッと後退りをする。
ガタン!ガタガタッと派手な音を立てていろんな物にぶつかるリード。
毎度見るその光景にフランクは内心笑みながらもササッと治療を終えると、リードに散乱した道具の片付けを命じ、エミリーの傍に座って向き直った。
リードのドタバタはもう慣れっこなのだが、それよりも、直近に迫る問題のほうを避けることが大事だ。
「エミリーさんは、何処にも怪我はありませんね?」
えぇ、フランクさん、平気です。
そう答えるエミリーに、確認させて下さい、と言いながらか細い手を取り、フランクは入念に調べ始める。
アランが来る前にしっかり診ておかないと、明確に返事ができないのだ。
曖昧なことを言えばどうなるか、それはフランクにも分からない。
少しばかり想像してみると、冷や汗が背中を伝う事態が容易に頭に浮かぶ。
何せ猫を抱き止めた手だ、小さなアト一つ見逃さないようにしなければ。
そうしていると、医務室の扉が開く音がし、ほんわかとしていた部屋の空気ががらりと変わり、一息にピーンと張りつめていくのを感じた。
診察を終えたフランクから、ため息交じりの笑みが漏れる。
「おやおや、これは・・。エミリーさん。どうやら王子様は、かなり焦っておいでの様子ですよ」
「え・・アラン様が・・?」
どうして?と、キョトンとした声を出すと同時に治療室の扉がバタンと音を立てて開き、アランがスタスタと入ってきた。
眉を寄せた表情で、怖いくらいの光を宿したブルーの瞳がエミリーを見つめる。
それはどう見ても、焦ってるのではなく、怒っているようで・・・。
「ぁ・・・アラン様、ごめんなさい・・・」
逆に焦りを感じてしまい、エミリーはつい謝ってしまった。
きっと、勝手に講義をキャンセルしたことを怒っているに違いない。
そう思いながら、自分のところに真っ直ぐ向かってくるアランをじっと見つめた。
そんなエミリーの傍らにアランは跪き、君は何を謝っておる、と不機嫌ながらも、小さな手をしっかりと握った。
「私は、怒ってなどおらぬぞ」
心配しておるのだ。
そう呟くように言い、武骨な指が少し青ざめた頬にそっと触れ、ブルーの瞳は小さな変化も見逃さないようエミリーの輪郭を丁寧に辿る。
「フランク、エミリーに怪我はないのか」
「はい。王子様、ご安心下さい。傷一つありません」
「あの、アラン様・・・シャルルが来てしまったの。わたし・・どうしたら・・・」
「あぁ分かっておる。このことは、恐らく義父君も義母君も知らないだろうな・・・だが、君は、心配せずとも良い」
大きな掌がシャルルの背を撫でると、びくんと頭を起こしたガラスのような瞳が、物言いたげに、アランをじーと見つめた。
慌ててガーゼを準備してぶっきらぼうに渡すリードに、シリウスの瞳がギラリと光り睨みを効かせれば、びくんと体を震わしてバババッと後退りをする。
ガタン!ガタガタッと派手な音を立てていろんな物にぶつかるリード。
毎度見るその光景にフランクは内心笑みながらもササッと治療を終えると、リードに散乱した道具の片付けを命じ、エミリーの傍に座って向き直った。
リードのドタバタはもう慣れっこなのだが、それよりも、直近に迫る問題のほうを避けることが大事だ。
「エミリーさんは、何処にも怪我はありませんね?」
えぇ、フランクさん、平気です。
そう答えるエミリーに、確認させて下さい、と言いながらか細い手を取り、フランクは入念に調べ始める。
アランが来る前にしっかり診ておかないと、明確に返事ができないのだ。
曖昧なことを言えばどうなるか、それはフランクにも分からない。
少しばかり想像してみると、冷や汗が背中を伝う事態が容易に頭に浮かぶ。
何せ猫を抱き止めた手だ、小さなアト一つ見逃さないようにしなければ。
そうしていると、医務室の扉が開く音がし、ほんわかとしていた部屋の空気ががらりと変わり、一息にピーンと張りつめていくのを感じた。
診察を終えたフランクから、ため息交じりの笑みが漏れる。
「おやおや、これは・・。エミリーさん。どうやら王子様は、かなり焦っておいでの様子ですよ」
「え・・アラン様が・・?」
どうして?と、キョトンとした声を出すと同時に治療室の扉がバタンと音を立てて開き、アランがスタスタと入ってきた。
眉を寄せた表情で、怖いくらいの光を宿したブルーの瞳がエミリーを見つめる。
それはどう見ても、焦ってるのではなく、怒っているようで・・・。
「ぁ・・・アラン様、ごめんなさい・・・」
逆に焦りを感じてしまい、エミリーはつい謝ってしまった。
きっと、勝手に講義をキャンセルしたことを怒っているに違いない。
そう思いながら、自分のところに真っ直ぐ向かってくるアランをじっと見つめた。
そんなエミリーの傍らにアランは跪き、君は何を謝っておる、と不機嫌ながらも、小さな手をしっかりと握った。
「私は、怒ってなどおらぬぞ」
心配しておるのだ。
そう呟くように言い、武骨な指が少し青ざめた頬にそっと触れ、ブルーの瞳は小さな変化も見逃さないようエミリーの輪郭を丁寧に辿る。
「フランク、エミリーに怪我はないのか」
「はい。王子様、ご安心下さい。傷一つありません」
「あの、アラン様・・・シャルルが来てしまったの。わたし・・どうしたら・・・」
「あぁ分かっておる。このことは、恐らく義父君も義母君も知らないだろうな・・・だが、君は、心配せずとも良い」
大きな掌がシャルルの背を撫でると、びくんと頭を起こしたガラスのような瞳が、物言いたげに、アランをじーと見つめた。


