テラスに立つのは、アランだった。

彼は今まで何をしていたのか。

少し時間をさかのぼり。

今は、エミリーたちがまだ池にいる頃。

ニコルたちが見つけだす前―――



冷たい空気が肌を刺し、ワインで熱くなった肌を冷やしていく。

アランは、つい先ほどまで他国の重鎮達に掴まり会話をしていたのだが、隙を見て外に出て来た。


出来るならば、社交の場を放り出して自らがエミリーの元まで赴いて行きたい。

姿が見えないだけでズキズキと心臓が痛む。

もしもあの場面を見ていれば、彼女がどう感じるかは分かっていた。

分かっていたのだが―――


ぎりりと唇を噛む。

あのとき、上着を汚されたあと「すぐにお直し致しますわ」と申し訳なさそうに微笑みながら言うビアンカの後についていき、「こちらに」と案内された部屋に入った。

するとすぐに、「これをお飲みになって、お待ちを。すぐに専門の侍女が参りますわ」とワインを薦められた。


恐らく事前に用意されていたのだろう。

見廻せば、何の装飾もないシンプルな部屋。

普段は会議などに使用されているものだと一見して分かる造り。

そこに、似つかわしくないベッドが一つ。


―――成程、な・・・。


昼間同様、ビアンカの考えはすぐに察することが出来た。

ワインを飲むふりをすれば、案の定、彼女はすぐに柔らかな身体を押しつけるようにしな垂れかかって来た。

豊満な胸元を見せつけるようにすり寄せ、手を自らの腰の下の柔らかな部位まで導いてゆく。



「何故あのような事をした」

「それは、貴方様が悪いのですわ。私は幼い頃からずっと貴方様だけをお慕いしておりますの。お分かりになってますでしょう?この私の身体は、貴方様だけを求めてお待ちしておりますの。ずっと。なのに、貴方様は―――」



ビアンカの指先が、アランの首元にあるタイを緩め始める。

色気を纏わせた指先が逞しい胸をつーと這う。



「ね?だから、お願い。貴方様で私の身体を満たしてくださいませ。ほら、私の熟れた部分はこんなに熱く火照っておりますの。どう?あの娘よりも、良い筈ですわ―――」



導かれる掌に、腕に、柔らかな感触が伝わってくる。

瞳を閉じ、真っ赤に彩った艶やかな唇が、口づけを懇願するように震えている。



「早く・・」



甘い声を出し、だんだんに誘いの手が過剰になりドレスの中にまで導いてきた。

胸の頂きが指先に触れ、男性ならば迷わず唇を塞ぎ、そこにあるベッドに押し倒すのだろう。