「見つけたわ!」
数人の警備と一緒に、ウォルターとシリウスを引き連れて来たのは。
「ほらぁ!王子妃様、やっぱりここにいるでしょ。私の勘は凄いんだから!」
褒めて!とばかりに自慢げに胸を張る、ニコルだった。
「エミリー様・・・ご無事で何よりです」
警備たちを掻き分けて駆け寄ってきたウォルターが、心底安堵した声を出した。
長い時間走り回っていたのだろうか、肩で息をしている。
アランが一番に信頼を寄せる、常に冷静な団長であるウォルター。
いつもビシッと姿勢良く、立ち居振舞いも崩れないその彼が、エミリーの前で脱力したように膝に手をついて屈んで立っている。
こんなウォルターは初めて見る。かなり疲れているよう。
けれど、それに比べ、先導してきたニコルの方は平気そう―――
「ウォルターさん、大丈夫ですか?」
そう声を掛ければ「平気です。申し訳ありません」と、すぐに表情と姿勢をぴしっと戻した。
「持ち場が離れており護衛につくことが出来ず、申し訳ありませんでした。本当にご無事で安心いたしました」
ウォルターに次いで、シリウスも深深と頭を下げるので、エミリーは慌てて頭をあげさせた。
「あなたたちは悪くありません。わたしが、誰にも言わずに勝手に外に出たのですから」
懸命に二人を宥めるエミリーの後ろから、コホン、と小さな咳払いがした。
「あー、君達君達?“無事”だとは、聞き捨てならないな。相変わらず私をなめているのか?護衛なら、この私がついていたんだ。何も危険な事はない。・・・テラス付近にいた警備から、私と一緒だと聞いてないのか?」
エミリーの横で自らを指差しながら快活に言うレオナルドに対し、ウォルターは、恐れもせず真正面から見据えて言った。
「そう仰る貴方様こそが誰よりも一番危険なのです」
「ウォルターさん、そんなことを言ってはいけません。レオナルドさんは」
「あぁエミリー?君は黙ってるんだ。君が入ると、話がややこしくなりそうだ」
でも・・だの、それでは・・だの、懸命に反論しようするエミリーをそっと後ろに下がらせ、レオナルドはウォルターに向き直った。
その広い背中が近寄りがたく感じてそれ以上声をかけられず、エミリーは黙ってなりゆきを見守るしかない。
「・・・そうか。だが、決してそんなことはないのだぞ。私など赤子のように可愛いものだ。この国にいる間、彼女の身辺には、十分気を付けた方がいい」
瞳を細めて低い声を出すレオナルド。
その只ならぬ迫力に、ウォルターは一瞬怯みながらも気丈に言葉を返した。
「ご忠告大変感謝します。ですが、それは我が主アラン王子をはじめとし我々兵士も重々承知しております。ご心配は無用です」
数人の警備と一緒に、ウォルターとシリウスを引き連れて来たのは。
「ほらぁ!王子妃様、やっぱりここにいるでしょ。私の勘は凄いんだから!」
褒めて!とばかりに自慢げに胸を張る、ニコルだった。
「エミリー様・・・ご無事で何よりです」
警備たちを掻き分けて駆け寄ってきたウォルターが、心底安堵した声を出した。
長い時間走り回っていたのだろうか、肩で息をしている。
アランが一番に信頼を寄せる、常に冷静な団長であるウォルター。
いつもビシッと姿勢良く、立ち居振舞いも崩れないその彼が、エミリーの前で脱力したように膝に手をついて屈んで立っている。
こんなウォルターは初めて見る。かなり疲れているよう。
けれど、それに比べ、先導してきたニコルの方は平気そう―――
「ウォルターさん、大丈夫ですか?」
そう声を掛ければ「平気です。申し訳ありません」と、すぐに表情と姿勢をぴしっと戻した。
「持ち場が離れており護衛につくことが出来ず、申し訳ありませんでした。本当にご無事で安心いたしました」
ウォルターに次いで、シリウスも深深と頭を下げるので、エミリーは慌てて頭をあげさせた。
「あなたたちは悪くありません。わたしが、誰にも言わずに勝手に外に出たのですから」
懸命に二人を宥めるエミリーの後ろから、コホン、と小さな咳払いがした。
「あー、君達君達?“無事”だとは、聞き捨てならないな。相変わらず私をなめているのか?護衛なら、この私がついていたんだ。何も危険な事はない。・・・テラス付近にいた警備から、私と一緒だと聞いてないのか?」
エミリーの横で自らを指差しながら快活に言うレオナルドに対し、ウォルターは、恐れもせず真正面から見据えて言った。
「そう仰る貴方様こそが誰よりも一番危険なのです」
「ウォルターさん、そんなことを言ってはいけません。レオナルドさんは」
「あぁエミリー?君は黙ってるんだ。君が入ると、話がややこしくなりそうだ」
でも・・だの、それでは・・だの、懸命に反論しようするエミリーをそっと後ろに下がらせ、レオナルドはウォルターに向き直った。
その広い背中が近寄りがたく感じてそれ以上声をかけられず、エミリーは黙ってなりゆきを見守るしかない。
「・・・そうか。だが、決してそんなことはないのだぞ。私など赤子のように可愛いものだ。この国にいる間、彼女の身辺には、十分気を付けた方がいい」
瞳を細めて低い声を出すレオナルド。
その只ならぬ迫力に、ウォルターは一瞬怯みながらも気丈に言葉を返した。
「ご忠告大変感謝します。ですが、それは我が主アラン王子をはじめとし我々兵士も重々承知しております。ご心配は無用です」


