シャクジの森で〜青龍の涙〜

「不思議なお話です。でも、ギディオンの王家でも、銀色の髪の子が生まれるそうです。過去には、そうでないときもあったようですけど」



昔は、正室に銀の髪の子が生まれないこともあったらしく、そのときたくさんの側室を招き入れたとエミリーは聞いている。

世継ぎの資格は、銀の髪の子にしか、ない。


エミリーは、銀の髪の子を産むことが出来るのだろうかと、ちょっぴり不安になった。

何と言っても異世界人なのだから、どこか体の構造が違っていたりするかもしれないのだ。

子供も出来にくいのかもしれない。

もしそうなったとしても、アランは側室を迎えないと言ってくれている。

けれど。

本当にそれでいいのか、とも思う。



「まぁ!では。王子様とのお子様は銀髪なのですね?でも、王子妃様の髪色の子も、両方生まれると素敵だと思いますわ」



それも、すぐに分かりますわね?

髪の乱れの原因は、王子様なのでしょう?


内緒の声でコソッと言われ、エミリーはドキドキしてしまった。

何故だかぽーっとしていて、あまり覚えていないけれど、もしかして大きな声を出していたのかも。

それで、外まで漏れ聞こえていたのかも。

行為には至ってないはずだけれど―――?


急激に頬が熱くなっていくのが分かって、わたわたとてのひらで覆い隠した。



「え?・・・と、赤ちゃん・・そうなると・・・いいですけれど・・・」



エミリーのそんな反応を見て、アニスがコロコロと笑った。



「王子妃様、正直すぎますわ。それでは、本当だったのか、と分かってしまいますわ」



鏡の中のアニスが、ぱちっとウィンクをしてくる。



「あ、そう、よね・・いやだわ、ごめんなさい。わたしったら」



これだから、アランに無防備だと叱られてしまうのかもしれない。

もっと気を付けないと―――



「私こそ、変な事を申し上げ、申し訳御座いません」



そう申し訳なさげな声を出しながらも、アニスはまだにこにこと笑っていた。