シャクジの森で〜青龍の涙〜

「ふむ――そうか・・・そこに、レオが来たのだな。変わった事は、それだけか?」

「はい。あとは、レオナルドさんが来て、ウォルターさんたちが来て、それから―――っ、きゃっ」



突然に両手を引かれて抱き寄せられ、素早く開けられた扉から、部屋の中に引き込まれるようにして入った。



「――アラン様?」



突然のことでドキドキしながら見上げるエミリーに、細められたブルーの瞳が映る。

それは、今までに見たことないような色を含んでいた。

怒ってるような、艶があるような、複雑な―――



「レオに、何をされた」



低い声が、エミリーの耳に届けられる。

武骨な指は耳の輪郭を辿るようにゆっくりと撫で、もう片方の手は華奢な腰をしっかりと抱えている。



「ぁ・・ぇ・・と、なにも・・・」



アランから漂ってくるなんとも甘い香り。

ずっと嗅いでいるせいなのか、なんだか身体の芯が熱くなってきた。

頭も半ばぼんやりしてしまって、耳を撫でる武骨な指だけがエミリーの感覚を支配していく。

熱を持った吐息が唇から洩れ、だんだんに力が抜けて行く。

その身体をなんとか制御しながら、エミリーは懸命に考えた。


レオナルドには確かに抱き締められたけれど、他には特に何もされていない。


それも、あれは、守ってくれていたわけで。

けれど、アランはそれでは納得してくれていないようで。

えっと、これはどうすれば・・・。



「目を見よ。正直に、申せ」



アランの声までもが、艶やかな響きを含んで聞こえる。

ぞくぞくと震える感覚が、エミリーを襲う。

耳輪を辿るように触れていた指が徐々に顎の方に移動し、ぐっと上向きに固定された。

長い親指が、物言いたげに震える唇を丁寧に撫でる。

それだけで、身体の芯がジンと痺れた。

艶を含んだアメジストの瞳には、アランの唇だけが映る。



「レオは、どこに触れた」

「ぁ・・手を・・・手を握られて、それから―――・・」



アランの唇がエミリーの唇の動きを、止めた。

動かないよう後頭部をしっかり支えられ、腰にあった手は背中をツーっと撫で上げて行く。



「は・・・んんっ」