シャクジの森で〜青龍の涙〜

グリーンの瞳はとても澄んでいて、まっすぐにエミリーを捉えている。

悪いことをするようには、見えない。




「そう。この国での秘密だ。そう、だな。例えば。今、ビアンカ殿と、部屋で、二人きりだ。一体、何をしてるのか―――・・・君には、わかるかい?」

「・・なんの・・ことですか。アラン様は、議の打ち合わせだと言っていたわ」

「本当に、そう思うのか?ビアンカ殿は、女、だ」




エミリーは、声も出せずにただ見つめた。

この方は何を言いたいのだろうか。

小さな胸に、モヤモヤとした不安が広がっていく。

アランは、エミリーを残して出ていくとき、辛そうな顔をしていたのだった。

けれど、そんなはずはない。

信じている。

だから―――



「そんなの、うそでしょう」

「あー、それにもう一つ、君に伝えたいことがあるんだ。ここじゃ、不味い。このまま一緒に散策に行こう。そこで、話す」



どうする?と聞いてくる。

以前のように、有無を言わせずにぐいぐいと引っ張ってはいかない。

エミリーの気持ちを尊重してくれているようだ。


信じても、いいのだろうか。

本当に、秘密を知ってるのだろうか。

それに、伝えたいことって―――


心の中同様にゆらゆらと揺れ動くアメジストの瞳が、じっと青年を見つめる。

それをとらえるグリーンの瞳は、だんだんに甘い熱を放ち始めていた。

身体を包む腕が、次第に強くなっていく。



「・・・エミリー」



耳の傍で声が聞こえ、ぞくぞくとした震えがエミリーを襲った。

この方がこんなことをするなんて。



「いやっ、放して」

「そこ!!」



突然に、鋭い声がした。

バタバタと走り寄る音が聞こえると、身体を包む腕の力が少し弱まった。



「そこで何をしているのです!!」

「そのお方を誰だと思っている!その腕を離せ!!」



しんと静まっていた廊下に、二種類の声が響き、空気が騒然とし始めた。

これは―――