「アラン様、わたし、なにか失礼をしたのですか?」
「いや。そんなことはない。君のせいではないゆえ、何も気にするな」
「あの方は相変わらずですね」
ウォルターはビアンカの消えて行った方角を睨みながら、忌々しげに言った。
「ウォルター、場をわきまえよ」
「は、これは私としたことが。申し訳御座いません」
アランはウォルターを窘めたあと、エミリーの身体を守るように抱き寄せた。
「・・・エミリー、部屋に参るぞ」
「はい、アラン様」
「アラン王子殿、今少しお待ち下さい」
ビアンカの脇に並んでいた大臣の一人が、アランに急いで近寄ってきた。
「ビアンカ様より、こちらが議の予定だそうで御座います」
そう事務的に言って、小さな紙を手渡した。
その中身をちらっと見たアランは「承知したと伝えよ」とだけ言い、頭を下げる大臣を残して広間をあとにした。
部屋は、離れにあった。
この城は4つの建物から成っていて、メインの建物の両脇側にそれぞれ二つの離れがある。
エミリーたちが宿泊するのは、位置的に言えば向かって右側の城壁に近い場所の方。
見晴らしがよく、ヴァンルークスの街並みが一望できるところだ。
こちらをお使いください、と案内された部屋は最上階にある一室。
中には既に荷が運び込まれていて、メイたちが一つ一つの箱を開けて、いそいそとクローゼットに仕舞っている最中だった。
エミリーの荷物しかなく、どうやら、アランとは別の部屋があてがわれたよう。
「私は、隣の部屋だな」
隣の部屋には、別のメイドたちが忙しげに出入りしている。
エミリーはひとり部屋に入るよう促された。
振り返ってアランを見上げれば、なんだか辛そうな感じに見える。
「エミリー、すまぬが暫く一人で居れるか。私はビアンカ殿に呼ばれておるゆえ、少々出て参る。戻ったら共に庭を散策しよう。良いな?待てるな?」
「はい、待ってます」
「恐らく、議の打ち合わせだ。すぐに戻るゆえ」
エミリーは逞しい腕に抱き寄せられ、額にあたたかな唇が触れるのを感じた。
「部屋から出てはならぬぞ」
「はい。いってらっしゃい、アラン様」
廊下を歩いて行くアランを見送り、エミリーはメイたちの作業の様子を見守った。
ナミはちょっぴりふくよかな身体をテキパキと動かし、何着もあるドレスをクローゼットに仕舞い、メイは空になった箱を片っ端からたたんで重ねていた。
やがて紐で縛った箱の塊を二人で持って「エミリー様、ごゆっくりどうぞ」と言って出て行った。
今度は、自分たちの荷解きにかかるのだそう。
騒がしさが静まり、部屋の中に一人残されたエミリー。
頭の中には、先程のビアンカが言ったことが蘇る。
「いや。そんなことはない。君のせいではないゆえ、何も気にするな」
「あの方は相変わらずですね」
ウォルターはビアンカの消えて行った方角を睨みながら、忌々しげに言った。
「ウォルター、場をわきまえよ」
「は、これは私としたことが。申し訳御座いません」
アランはウォルターを窘めたあと、エミリーの身体を守るように抱き寄せた。
「・・・エミリー、部屋に参るぞ」
「はい、アラン様」
「アラン王子殿、今少しお待ち下さい」
ビアンカの脇に並んでいた大臣の一人が、アランに急いで近寄ってきた。
「ビアンカ様より、こちらが議の予定だそうで御座います」
そう事務的に言って、小さな紙を手渡した。
その中身をちらっと見たアランは「承知したと伝えよ」とだけ言い、頭を下げる大臣を残して広間をあとにした。
部屋は、離れにあった。
この城は4つの建物から成っていて、メインの建物の両脇側にそれぞれ二つの離れがある。
エミリーたちが宿泊するのは、位置的に言えば向かって右側の城壁に近い場所の方。
見晴らしがよく、ヴァンルークスの街並みが一望できるところだ。
こちらをお使いください、と案内された部屋は最上階にある一室。
中には既に荷が運び込まれていて、メイたちが一つ一つの箱を開けて、いそいそとクローゼットに仕舞っている最中だった。
エミリーの荷物しかなく、どうやら、アランとは別の部屋があてがわれたよう。
「私は、隣の部屋だな」
隣の部屋には、別のメイドたちが忙しげに出入りしている。
エミリーはひとり部屋に入るよう促された。
振り返ってアランを見上げれば、なんだか辛そうな感じに見える。
「エミリー、すまぬが暫く一人で居れるか。私はビアンカ殿に呼ばれておるゆえ、少々出て参る。戻ったら共に庭を散策しよう。良いな?待てるな?」
「はい、待ってます」
「恐らく、議の打ち合わせだ。すぐに戻るゆえ」
エミリーは逞しい腕に抱き寄せられ、額にあたたかな唇が触れるのを感じた。
「部屋から出てはならぬぞ」
「はい。いってらっしゃい、アラン様」
廊下を歩いて行くアランを見送り、エミリーはメイたちの作業の様子を見守った。
ナミはちょっぴりふくよかな身体をテキパキと動かし、何着もあるドレスをクローゼットに仕舞い、メイは空になった箱を片っ端からたたんで重ねていた。
やがて紐で縛った箱の塊を二人で持って「エミリー様、ごゆっくりどうぞ」と言って出て行った。
今度は、自分たちの荷解きにかかるのだそう。
騒がしさが静まり、部屋の中に一人残されたエミリー。
頭の中には、先程のビアンカが言ったことが蘇る。


