ぐりぐりと、乱暴に頭をなでられた。



あたしは、彼を見上げる。



「……ついて行っちゃダメ?」


「……わかっている事を、いちいち聞くな」


「ですよね……」


ぐちゃぐちゃになった、村の再建。


戸籍がない人々が、この世界と共存して生きていく基盤。


それを作るのには、

はたして、一人の一生で足りるのだろうか。


ぼんやり考えていると、瑛さんが口を開いた。


「お前は、高校を卒業したらあの町を出て、

広い世界を見るんだろ?


それから……何だったか。


そうだ、キリスト教徒でもないのに、

ウェディングドレスとやらで、結婚式を挙げて。


子供をたくさん産んで、育てるんだろう?」


「……よく覚えてますね」


「俺は、バカじゃないからな」


そんな、すごく前にした話。


……じゃ、ないや。


すごく昔に思えるけど。



あたし達は、この夏の間しか、一緒にいなかったんだ。