六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



「今、族長は六花の翼の力を、

手に入れようとしています。

母上や他の呪術師を集めて、瑛様を……」


「瑛さんを……?」


「とにかく、ひどい傷を負わせ、

意識を失わせようとしています。

しかし翼の力なのか、瑛様は苦しむばかりで、一向に……」


慎重に選ばれた琴さんの言葉で、胸が震えた。


あの残忍な岡崎滋が、瑛さんにどんな仕打ちをしているか。


想像しようとしただけで、息が苦しくなった。


「だーかーら。

アンタ達の自業自得でしょうよ!

さらって殺そうとした相手に、よくそんな事頼めるわね」


清良が軽蔑の眼差しを、琴さんに向ける。


「わかっています。

わかっていますが……。

もう、夢見姫しか頼る方がいないのです」


琴さんはプライドを捨てて、頭を下げ続けた。


やっぱり……。


自分を裏切った人がどうなろうが知らない。


そう言ったのは、本心じゃなかったんだ。