六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



清良がきっぱりと言った。


「あたし達の任務は、夢見姫を守る事。

アンタをみすみす危険にさらすなんて、できない」


「清良……」


いつもは味方をしてくれる清良の、完全な拒絶。


みるみるうちに、心に暗雲が立ち込めていく。


「清良、お願い。

瑛さんにも事情があったんだよ。

瑛さんのおかげで、あたしは生きて帰れたんだよ?」


「そうやって、せっかく生きて帰ってきたのに。

何でわざわざ、また行かなきゃならないの?

自分が死んでも、好きな人が助かればいいって言うの?」


「そんな事、言ってない!」


「そういう事でしょう!?

何で、瑛が命懸けで守った命を、大事にしないのよ!?」



清良が立ち上がって叩いたテーブルが、大きな音を立てた。


しん、と部屋中が静まりかえる。


「瑛は、アンタに戻ってほしくなんかないと思う」


そう言って、清良は座り直した。