「だからお前は、俺の小さな幸せより、

もっと、もっと、たくさんの幸せをつかんでくれ」



……なんで、そんなことを言うの。


なんで、一緒にいたいと言ってくれないの。


「……じゃあ、な……」


聞いた事もないような優しい声に、

涙は次から次へと溢れて、落ちた。


「いやぁ……っ」


触れただけの手は、すぐに届かなくなってしまう。


翼が彼を、夜空へ連れていく。


その風圧で、あたしは太一の元へ吹き飛ばされた。


「瑛さん……!

瑛さん……っ!」


呼んでも、返事は無い。


視界が霞み、白い翼しか見えなくなってしまう。


「瑛さん……!!」


いっぱいに手を伸ばしても、既に空にいる彼に届くはずはなかった。



やっと、届いたと思った貴方の心も。



やはり、遠くて。



悲しくて、悲しくて。



太一の腕で泣き叫びながら、あたしは意識を失った。