「な、にを……っ」
瑛さんが目を見開く。
あたしの霊気は槍となって、砦の天井を突き刺し──。
そこに、大きな穴を開けた。
「くそ……!!
皆の者、注意しろ!!」
滋の声と、瓦礫が床に落ちていく音が響く。
もうもうと巻き上がる土煙の中、忍達は逃げ惑った。
「まりあ……!」
苦しむ瑛さんの手を握り締め、あたしは一心に念じる。
(翼を…………!!
彼を守る翼を!!
彼を自由に導く翼を!!
六花の翼を、彼の背に……!!)
夏のむわりとした重い空気が、変わっていく。
忍達も滋も琴さんも、上を見上げて固まった。
「雨…………?」
雫は、ぽたぽたと、床や彼等の着物にシミをつくっていく。



