傷ついた瑛さんは、口から大量の血を吐いた。


このまま置いていけば、絶対に死んでしまう。


それなのに……。


「はやく、にげ、ろ……!

どうにかしろ、役立た、ずっ……!」


あたしの髪をつかんで言うのは、そんな事ばかり。



背後では、ゆっくりとした足音が徐々に忍び寄ってきていた。




お母さん。



助けて。



お願い。



この人を、置いては、行けないの。



絶対に!!




涙がぼたぼたと、血で汚れた頬に落ちた。



(翼を……)



あたしは、空に念じた。



お母さんに、届くように。




(この人を守る翼をちょうだい!!)




ぶわり。



あたしの周りに、霊気の渦が立ち上った。