六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



「あ……っ」



部屋の中に入ってきたのは。


この前映像で見た、和服の男の人。


あたしの兄だった。


ドクン、と胸が鳴る。



「よく来てくれたね、皆さん」



優しい目。優しい声。


実際に会うまで全くわからなかった、強い光のようなオーラ。


もちろん、目に見えるわけじゃない。


なんとなく、肌で感じるだけだけど。



「はじめまして、まりあ……。

君の兄の、留衣です」



まっすぐ見つめられて、あたしは思わず立ち上がった。


留衣さんはゆっくり近づいて……。


その長い腕で、優しくあたしを包んだ。


耳のすぐ近くで、優しい声が響く。



「良かった、元気そうで。

安城家で大事にしてもらってたんだな」


「はい……」


「びっくりしただろう?

すまなかったね、名乗り出るのが遅くて……」


「いいえ……」



優しい、その声と体温に。


抱えていた不安が溶けだした。