六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



だって、まだ実感がわかないんだもん。


こんな立派なお屋敷で、自分が産まれたなんて。


と言うか、産まれてすぐ預けられたなら、
お母さんのお腹の中でしか、この家を知らないんだよね。


お母さん……。


あたしのお母さんは、ここに住んでたんだ……。


いったい、どんな人だったんだろう……。


木の香りがする天井を、ぼんやり見つめていたら。


するりと、入口の襖が横に滑った。