「目、悪くすんで」
オーリィが歩み寄ってきて、その右手を顔の前にかざす。
明るい金色の光が、机の上を照らした。
「ありがとう……」
さりげない気づかいに、焦っていた心が少しなごむ。
しかし不安は消えない。
あたしはパラパラとページを後ろからめくった。
瑛さんの名前があるとすれば、それはつい最近の事だろうから。
「うわぁ、漢字だらけやなぁ」
オーリィが目をしばたかせる。
あたしだって、日本人だけど、やはりクラクラした。
でも。
「あっ」
『瑛』の一文字が、目に飛び込んできた。
あった……。
心音が高くなる。
(内容を……わかるように……)
本に向かって、一心に祈る。
ただの夢ならいい。
ただの夢であってほしい。
そんな想いを知らず、本の文字は剥がれるように宙に浮く。
オーリィが目を見開いた。



