「……ありがとう」
そう呟くと……。
涙で濡れた手で、あたしの顔をそっと包んで。
彼の唇が、あたしの唇に触れた。
夢のように、優しく、触れた。
何度も……。
あたしは何故か、それを自然に受け入れていた。
痛みも悲しみも恥じらいも、どこかへいってしまって。
ただ、お互いのぬくもりを共有する行為に没頭した。
最後に。
「……許してくれ」
麻痺した頭の隅に聞こえた言葉が。
そのキスに対するものなのか。
他のことに対するものなのか。
あたしには、わからなかった。
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