六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



「あれだって、本当に望んではいないかもしれない。

お互いに、勝手に決められた縁談だ。

しかも俺は、いつ死ぬかわからない忍なんだぞ」


瑛さんは厳しい瞳であたしを見た。


「そんな亭主をただ待つことしかできない女達は、不憫だ。

自分がいつ死ぬかもわからないのに、

妻や子供を待たせるしか出来ない、俺達も」


「…………」


「だから忍は、刃の下に心と書くんだ」


刃の下の、心……。


傷ついても、傷ついても、

自分が仕える者のため働いて、耐えなければならない……。


「……でも、琴さんはきっと、

貴方のことが好きです」


「一回見ただけだろう」


「わかりますよ、女ですから」


同じ人を想う、女だから。