六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



「……久しぶりのような気がするな」


沈黙に耐えかねたのか、瑛さんが先に口を開く。


「昨日の昼、会ったのに」


「そうだった。

思い切り、殴られたんだったな」


「貴方が意地悪するからでしょ」


「もういい、わかってる」


意外と普通に声が出る自分に驚く。


だけど、やはり胸はぎりぎりときしむ。


「……いつ、帰るんですか?」


「……明日」


「明日……」


早いな。


本当に、これが最後なんだ。


「こういう遊び、昔しました?」


「……どうだったか……忘れた。

かくれんぼは訓練だったから、楽しくなかった気がする。

見つかると、手裏剣を投げられる」


「ぶっ、本当に?嘘みたい」


「だろう。

聞くと笑えるが、俺は必死だった」


暗い押入れの中で、彼の白い頬が光る。


さら、と銀髪が流れる音がした。