「わ、あっ……」
「しっ」
思わず大きな声を出しそうになったあたしの口を手で押さえ、
瑛さんは無理に押入れに入り、戸を閉めた。
その瞬間、廊下をパタパタと走っていく、誰かの足音がした。
「……行ったな」
足音が去っていくと、瑛さんは息をついた。
「もう少ししたら移動するから、我慢してくれ」
ボソリと呟く。
あたしは笑えてしまった。
「ふ、ふふ……」
「なんだ」
「真剣じゃないですか」
「当たり前だ。
忍の力を思い知らせてやる」
「とか言って、生き生きしてるし」
「……邪魔したな」
「あっ、今出てったら見つかりますよ?」
押入れから出て行こうとした瑛さんは、耳を済ませてため息をついた。
笑っているはずのあたしの胸は……。
彼との近い距離に、どくどくと高鳴っている。
あたし、汗臭かったらどうしよう。
そんなバカみたいなことを考えた。



