六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



誰の足音も聞こえない。


あたしは、とある部屋の押入れに隠れていた。


中は昼間でも暗くて、目が慣れるのに時間がかかる。


その間に乱れた息を整えた。


「ちょっと、疲れたかも……」


炎天下で走り回ったせいか、頭がクラクラした。


そういえば、昨夜はあまり眠っていなかったのだ。


ちょっと寝ちゃおうかな。


そう思った時だった。


突然、押入れに明るい光が差し込んできたのだ。


「!!」


「げっ」


一瞬、時間が止まった気がした。


現れたのは、鬼の太一ではなく……。


瑛さんだった。