「もしかして、俺に気を使ってる?」
「申し訳ないけど、そんな余裕ありません」
「じゃー良いじゃん、もう。
当たって砕けちまえ!」
「もー……」
当たって砕けろ、か。
太一らしいね。
「もう、いいの。
結局、住む世界が違うんだよ。
太一の言う一発逆転があったとしても……。
あたしは、普通の世界で生きていきたい。
あの人は、彼の一族特有の世界でしか生きられない。
わかってたんだ、どうしようもないんだって」
「姉ちゃん……」
「太一のいう通り、傷つくだけだって、わかってた。
でも、違ったよ。
そんな、被害者みたいな想いだけじゃなかった」
昨夜、一晩中思い出してたんだ。
今までのことを。
「今は悲しくても、
大人になったら、いい思い出になると思う」



