「逆に、太一がなんでそんな事言うのか、
わかんないよ」
「…………」
立ち上がりかけていた太一は、すとんと座り直した。
「俺はただ、バカなんだよ。
そうしたいと思ったら、
体と口が勝手に動いちゃうだけ」
そう言うと、バリバリと頭をかいた。
「で、今は、姉ちゃんに行ってほしいんだ。
瑛さんのとこへ」
「太一……」
「伝えられない苦しさ、わかるからさ。
でも、逃げないでほしい」
綺麗な瞳に真っ直ぐ見つめられて、言葉が返せなくなる。
すると太一は、あたしの肩を叩いた。
「もしかしたら、一発逆転あるかもしれねーじゃん!」
「ないよ……。
バカじゃないの?」
「バカだよなぁ。
好きな人にこんなアドバイスするなんてさ」
太一は「あはは」と笑った。
無理をして。
そんなところが、あたし達姉弟は似てるな、
なんて、悲しく思った。



