六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



「他の皆は?」


「オーランドさんが余計な事言わないように、

清良さんが見張ってる」


「ぷっ、何それ」


また「慰めてあげる」とか言って、

抱きしめるつもりだろうか。


想像して笑ったあたしに、太一が眉をひそめた。


「無理すんなよ」


「してないよ」


「してないわけあるかよ」


なぁ、と、太一が下を見ていたあたしの額を無理に上げた。


「逃げんなよ」


「……何から」


「自分の気持ち。

好きなんだろ?瑛さんが……」



ちょっぴり苦しげな太一の声が、胸を潰す。


「……うん」


「じゃあ、言わなきゃ。

行こう、姉ちゃん」


「行かないよ。

行かないし、言わない」


「なんで」


「あたしは太一より、

よっぽど弱くて卑怯だから」



太一が黙って、あたしはやっと、その目を見返した。


傷つく事を恐れずにぶつかって。


「ずっと待ってる」なんて言えない。