六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



「あ、おはよー」


昼になって。


今日初めて顔を見た太一に、挨拶をした。


地下の書庫の中。


本に埋もれていたあたしに、

太一がパンを持ってきてくれたのだ。


「食べろよ」


「わーありがとう!

お腹空いてたんだ!」


バリッと菓子パンの袋を開けると、太一は向かいの椅子に腰かけた。


「……瑛さん、帰るんだって」


「うん、そうみたいはへ」


最後はパンを噛んで、ちゃんと言えなかった。


太一は責めるように、あたしを見る。


「いいの?」


「何が?」


「……何も言わないで、お別れしちゃってさ……」


「……?」


予想外のセリフに、首をかしげてしまった。


清良ならわかるが、

瑛さんを嫌っている太一から、言われると思わなかった。


黙っていると、太一がため息をついた。