六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



額をつけたまま、瑛さんは話しだす。


「本当に、ただ、

からかってやろうと思っただけなんだ」


「……最低……」


「すまない」


「琴さんに、言いつけてやる」


「好きにしろ」


呼吸は不思議と、少し落ち着いてきた。


しかし涙は1つ、また1つと落ちていく。


「お前だから……お前なら、

笑って許してくれると思ったんだ……」


「……は?」


「睡眠薬の時も、怒らなかった」


「あれは、寝ちゃったし、太一がいたから!」


「だが、戦いの後、冗談にしていた」


「そりゃあ、そんな事より、

貴方の怪我の方が心配だったからでしょ?」


ふわり、と額が離れて。


紫色の瞳が、あたしを見つめた。


「そうなのか?」


「そう……です」


「俺はてっきり、

お前は、そういう冗談に慣れているのかと……」


「そんなわけないでしょ!!」