「お母さん……」
あたしは引き寄せられるように、お母さんに抱きついていた。
赤ん坊の時に抱っこしてもらった記憶はないけれど。
何故か懐かしいような、不思議な気持ちが胸を満たした。
『まりあ……。
ごめんね、そばにいられなくて』
「ううん……」
お母さんの体は、あたしよりも少し細かった。
その感触を覚える前に、お母さんが体を離して、あたしの目を見つめた。
『ごめんね、あまり時間がないから』
時間?
キョトンとするあたしに、お母さんは一方的に話しだした。
体は離したけれど、両手は優しく握ったままで。
『まりあ、よく聞いて。
私の予言は外れた事がないの。
貴女は近い内、【六花の翼】を出現させる事になるわ』
この世の混乱を収める六花の翼。
伊奈との戦いの前に、太一が言っていたけど。
結局、出現する事はなかった。