瑛さんはまっすぐあたしをにらんでくる。


その顔には嫌悪も恥じらいもない。


真っ赤なのは、あたしだけ。


「思考停止って……」


「お前、おかしな術を使っただろう。

あの時からただ者ではないと思っていたが――」


「つ、使ってません、そんなの!」


この人、本気?

どう考えても、キスじゃん、あれは。


それを嫌がらせとか、術とか……。


「じゃあ、何なんだ」


そんな、キョトンとした顔で見られても。


いっそのこと、伊奈と同じように燃やしてほしい……。


バクバクする心臓を押さえて、

「あわわわ」としか言わないあたしを見つめて。


瑛さんは、何かに気づいたような顔をした。


「まさか、お前――」


「あああ、あれは!!

寝ぼけただけです!!

すみません、うわあああぁぁ」


何と続くのか聞くのが怖かったあたしは、

あっさり壊れて逃げてしまった。