「く……っ!」
伊奈が鞭を引っ張るが、びくともしない。
「……お前は、戦う相手を間違えている。
戦うべきは……自分自身だ!」
紫の炎が勢いを増し、凄まじい霊気と共に瑛さんの背後に集約される。
(お願い!)
「目を覚ませ!!」
瑛さんは、まだ自由な右手を炎の中に突っ込み――。
「燃えろ!!」
声と共に、人差し指を突き出すと――
背後の紫の炎が何本もの矢となり、伊奈の体を貫く!
あたし達が見守る中、矢を受けた伊奈は仰向けに倒れた。
「やった!!」
太一と清良が飛び上がる。
瑛さんの背後から炎が消え、主を失った鞭がその細い手首から床に落ちた。
そして、力を使いきった彼自身も、その場に倒れこんだ。