すると瑛さんの声が、あたしの言葉を遮った。
「……大丈夫だ、朝でいいから」
「…………」
「今夜は眠れ」
いつも厳しい人が、嘘のように穏やかな声を出すから。
余計に涙が溢れてしまう。
「眠れない……もうやだ、怖い……」
「大丈夫だ、ただの夢だ」
「あんな、極彩色の悪夢、見たことありますか?
もうやだ、やだっ、あたしは【夢見姫】なんかじゃない!
あたしは……っ」
そこまでで、またあたしの言葉は遮られてしまった。
瑛さんの手が、あたしの顔を自らの胸に押し付けたから。
もう一方は、背中に回されていた。
「……わかってる。
大丈夫だ」
そう言って、抱きしめたまま、あたしの長い髪を撫でた。
優しく、優しく……。
その仕草に、胸がぎゅうとしめつけられた。



