六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



「ありがとうございます、教えてくれて……」


「さあな、全部嘘かも知れない。

お前はもう少し、人を疑う事を覚えろ」


腕を組んで、こちらにため息を落とす。


「……信じるなって、また言うんですか……?」


「そうだ。特に俺のような人間は」


「でも……本当に悪い人は逆に、『自分を信じろ』って言いますよ?

敵にわざわざ『自分を疑え』なんて、言う人はいません」


「…………」


瑛さんの目が、わずかに見開かれた気がする。


そして、すぐにそれは厳しく細められた。


「お前のそのお人よしなところが、アダになる日が必ず来る」


「……お人よしじゃありません」


「これこそ素直に聞け。

忠告をしてやってるんだ」


だって、と反論しようと思ったけど、

瑛さんはそのまま部屋から出て行ってしまった。