六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



「アイツはな、岡崎一族出身や」


「な……っ!?」


「ええっ!?」


自分も驚いたけど、瑛さんも驚いた。


「やけど、アイツはちょうど18年前に、一族から離脱してる。

瑛が産まれるほんの少し前やな」


「離脱……。

じゃあ、知らなくて当然ですね……」


同意を求めたけど、瑛さんは答えない。


必死に記憶を探っているようだ。


「伊奈は、偽名か?」


「ようわかったな。

そう、ホンマの名前は美合(みあい)や」


「美合……あの一家の事か」


瑛さんは思いついたように顔を上げる。


「知ってるんですか?」


「聞いた事があるだけだがな。

俺が産まれる少し前に、一族から離脱した一家がいたと」


「よく覚えてますね……」


「離脱するなんて事は普通、ありえない。

俺の一族では本当に珍しい事だから」


瑛さんは腕組みをして、ため息をついた。