あたしはお母さんの事を思った。
留衣さんに聞いていたよりよっぽど、
彼女が背負っていたものは重かったんだ……。
「だからまりあさん、貴女にこの国を救っていただきたい」
伊奈の目は、まっすぐにあたしを見た。
その黒い目は全くぶれていない。
この人、本気だ……。
「そんな事言われても、
あたしは政治の事なんかわからないし、夢もまだ見はじめたばかりだし……」
「大丈夫です。
こちらで力を引き出す訓練をしましょう」
「無理です、重すぎます……」
「まりあさん、大丈夫ですから。
大事な夢見姫を傷つけるような事はありませんから」
伊奈があたしに手を差し出す。
ダンスを申し込む、王子様のように。
しかし前の三人は、その手を触れさせようとはしない。
「綺麗事はそっちの方でしょ?」
清良が口を開いた。



