六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



あたしはお母さんの事を思った。


留衣さんに聞いていたよりよっぽど、

彼女が背負っていたものは重かったんだ……。


「だからまりあさん、貴女にこの国を救っていただきたい」


伊奈の目は、まっすぐにあたしを見た。


その黒い目は全くぶれていない。


この人、本気だ……。


「そんな事言われても、

あたしは政治の事なんかわからないし、夢もまだ見はじめたばかりだし……」


「大丈夫です。

こちらで力を引き出す訓練をしましょう」


「無理です、重すぎます……」


「まりあさん、大丈夫ですから。

大事な夢見姫を傷つけるような事はありませんから」


伊奈があたしに手を差し出す。


ダンスを申し込む、王子様のように。


しかし前の三人は、その手を触れさせようとはしない。


「綺麗事はそっちの方でしょ?」


清良が口を開いた。