六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



伊奈はオーバーに、喜んだような顔をする。


底知れぬ不気味さを持った彼を、

他の三人は武器を構えたままにらんでいた。


「単刀直入に言いましょう。

夢見姫、貴女の力をこの国のために貸していただきたい」


「この国のため……?」


聞き返すと、伊奈はうなずいた。


「そうです。

貴方達もご存知だとは思いますが、今この国は完全に迷走しています。

不景気、なんて言葉では済ませられない。

この国は破綻寸前まで来ているのです」


破綻寸前――。


確かに経済は危機的な状況だし、産業も伸び悩んでいる。


将来税金を納める子供の数は、少なくなる一方。


他にもたくさんたくさん、問題があるのは不勉強なあたしでも、知ってるけど……。


黙っていると、伊奈が口を開く。


「実は、この状況になるのを先代の夢見姫……

貴女のお母さまは、ご存知でした」


「え……」