六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



「……近づいてくる……」


瑛さんの声に緊張が混ざる。


「な、何がよ?」


「とにかく、隠れろ」


「マジで?じゃあ、こっちか」


あたし達は道の脇の林に入った。


道なき道を奥まで進んでいくと、学校の裏の森に繋がっていく。


周りに木しか見えなくなったところで、あたしは気づいた。


「……ダメ……」


「えっ?姉ちゃん、何か言った?」


「森はダメだ……出なきゃ!」


あたしの発言が、全員の足を止める。


「朝方の夢と同じ景色なの……」


瑛さんが眉をひそめて口を開く。


「わからないだろう。

こんな木ばっかりじゃ……」


「ほぅ、驚きましたね。

もう予知夢を見はじめているのですか」


「!!」


突然自分達以外の声がして、全員が身構える。


瑛さんは苦無を、太一はお札を、清良は剣を握りしめた。


あたしはただ、三人の後に立つしかできない……。