「ごめんなさい……」


どうして忘れてたんだろう。


皆が大事にしてくれる。


だからあたしは、自分を守らなきゃならないのに。


あたしを大事にしてくれる人達のために。


怖がってる場合じゃないんだ。


「瑛さん……」


やっと顔をあげると。


寂しげな紫色の瞳と視線がぶつかる。


「瑛さんは……本当に、仕事しかないの……?」


思わず聞いてしまうと、瑛さんは視線をそらした。


やだよ……。


胸が痛い。


なんでそんなに寂しそうなの?


雨のせいなの?


あたしは瑛さんの肩越しに、空を見上げた。


遠くで雷が鳴る。


まだまだ止みそうにない……。


もうやめて。


雫が彼の顔を濡らすと。


涙に見えてしまうから。


(やんで……)


もう、彼の体を濡らさないで。


(晴れて……!)


あたしは空を、思いきりにらんだ。