あたしは自転車に乗って、安城家の近くの神社に来た。


「あっつ……」


夏の太陽は半分くらい雲に隠れている。


神社といっても小さな神社で、休日でも誰も居なかった。


本当は、安城家に帰りたかった。


だけど、なんとなく足が止まってしまったんだ。


安城のお母さんもお父さんも、

瑛さんみたいに厳しい事は言わないだろう。


きっと帰りたいと言えば、以前と何も変わらずに迎えてくれる。


だけど、その優しさが、今の自分には毒になるかもしれない……。


「はぁ……」


この神社は、小さな頃からあたしと太一の遊び場だった。


まだ自然がたくさん残るこの田舎で、今までのほほんと育ってきたのに……。


「ちょっと、座らせて下さいね」


お参りをしてから、賽銭箱に続く階段に腰をかけた。


「やっぱり落ち着くなぁ……」


外の空気を吸い込むと、肺が浄化されるような気がした。