六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



「じゃあ、どっちの姓を名乗って出ていくか、それは決まってるの?

安城?音羽?」


「そりゃ……安城だよ。

お父さんとお母さんが良ければだけど……」


ふっと、手を離される。


繋いでいた手の平は、いつの間にかしっとりと汗ばんでいた。


「それはそれでビミョー……」


「な、なに?

太一はあたしがお姉ちゃんじゃ嫌なわけ?」


うなだれた太一をのぞきこむと、なんだか苦しそうな顔をしている。


と思ったら、次にはくしゃりと笑った。


「嫌じゃない。

嫌なわけ、ないじゃん」


「太一……?」


「ごめん!変な事聞いちゃったな。

あ、もう着いたし」


ほら、と2年の下駄箱の方に背中を押された。


何よ、と振り向くと、太一の後ろから勢いよく走ってくる人影に気づく。


「おー!ヤマトナデシコ、まりあー!!」


「おっ、オーランドく……っ!」


返事をする前に、走ってきたオーランド君に抱きつかれてしまった。