そんなやつに恋をした。






それはこの職業のせいでもあった。


「いって!小指ぶつけた!痛いたいたい!」


…ただ馬鹿なのも一つだが。



運び屋なんていい仕事じゃない。
人から疎まれ、憎まれ嫌われて。


人は皆この運び屋を嫌った。


倉井が運び屋だと分かると、誰だって離れていった。それだけならまだしも、陰湿なものもあった。


事故に見せかけて車でひこうとするやつもいたし、殴り殺そうとするやつも。前なんて家を燃やされた。


まともに働けやしないし、学ぶこともできない。



外にも出れない。



だから居場所を転々し、夜"仕事"をする以外ほとんど出歩かない。


見るもの触れるもの全てに怯えていた。
音には得に敏感だった。
だからテレビも付けられなかった。



何もできなかった。




したくてもできない。
そういう空気に押し潰されそうになりながら、それでも生きてきた。



だから無知だった。



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