そんなやつに恋をした。






「ふぅ…」

コツコツとヒールを響かせながら歩く女。
――暮芹亜(くれ せりあ)。

「早く帰んないと倉井が泣いちゃうわね。」

…でてってから一分たってないのにこの言葉。
どうやらお二人共仲が良いようで。


マンションの10階から階段で下りていく芹亜。
ときおりすれ違う人に挨拶をしながら。


「そういえば…」


確か今日くらいにバーゲンセールのハガキが来るはず。
いつも芹亜が服を買っている店から。


「倉井ってバーゲンのこと知ってるかしら?」

ってどんだけ馬鹿なんだあの男は。
そんなこと呑気に言ってるんじゃなく教えてやれよ。


「まいっか」


いいのかどうか良く分からないが。
またコツコツとヒールを響かせながら歩き出す。


仕事に向かうために。



見ての通り
芹亜の仕事は昼。



『人を悪夢から解放すること』



倉井とは正反対の仕事だった。



_