そんなやつに恋をした。






「だって俺のこと嫌わないから。」
「だってあなたは優しいじゃない。嫌われるのは右目だけで十分。」


芹亜は倉井の右目を望みこむ。
倉井はキョトンと首をかしげた。


「でも実際悪夢見せんのは俺だし。」
「あなたの右目、ね。それに悪いことしてるわけじゃないわ。」


倉井が右目を見せるのは限られた人だけ。


−−−−−


ガコン

自販から出てきたコーラを片手に公園をぶらつく倉井。

はたから見れば、グレまくったやつが不良化して、ふらついているようにしか見えない。


「かったり〜…」


かったるくても仕事は仕事。
やらなくてはいけない。

運び屋である以上悪夢を人に見せなくてはいけない。

今はそのターゲットを探している。


「あ?」


公園の隅から怒声が聞こえた。
暗闇の中電灯もついてないこの公園に来るのはだいたい不良だ。


「よっと」


座っていたベンチから身を投げ出して、声の方向へと歩き出す。
真っ暗な公園をまっすぐ。

元々視力がいいのでつまづかない。それに夜は倉井の領域。力が強くなるのは当然だった。


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