そんなやつに恋をした。






それまで右目を覆っていた手を外す。

「両目の方がいい。」
「そりゃそうでしょ。」

視界がすっきりとしたのが珍しいのか、目をパチクリさせる倉井。


「冷めちゃうわよ」
「ん」


またチャーハンを美味しそうに頬張る倉井。
それを見た芹亜は微笑ましさを感じていた。


−−−−−


悪夢を見せる倉井の右目
解放をさせる芹亜の左目

これがぶつかった時何が起きるのか。


それは消滅だった。


互いの目が相手の力を消し、無効化させる。


倉井が唯一右目を解放できるのは芹亜の前だった。

だが、いつもの癖で隠してしまう。
今だに怯えている証拠だった。


元々真面目で優しい倉井。
欠点は右目。

右目のせいで人から嫌われ、馬鹿で…


本来悪夢なんか見せたくない。


「倉井は優しいわね」
「ほぇ?」


唐突なその言葉にハテナを浮かべつつ、チャーハンを頬張る。


「芹亜はもっとやひゃしい。」
「あら」


ごっくんと飲み込んでから言い直す。


「芹亜はもっと優しい。」
「そうかしら」


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