思い切り首を振って拒否すると、ロイドは額を叩いた。


「やる前から無理だと決めつけるな」
「だって……」


 結衣は恥ずかしさに、泣きそうな顔になる。
 するとロイドはフッと笑って、結衣を抱き寄せ頭を撫でた。


「しょうがないな。さっきので許してやる」
「うん……」


 ホッとしたものの、なんだか丸め込まれたような気がする。
 元々ロイドが、きちんと片付けないのが悪いのではなかっただろうか。

 俯いたまま考えていると、ロイドがあごに手を添え、顔を上向かせた。


「じっくり教えてやるから、しっかり覚えろよ」


 囁くようにそう言って、ロイドは結衣を更に抱き寄せ、ゆっくりと顔を近づけてくる。

 唇が触れ合う間際、ロイドが再び囁いた。


「ユイ、愛してる」


 胸の奥がキュンとなり、結衣は静かに目を閉じる。
 唇が塞がれ、目眩がしそうになった。

 このキスには抗えない。

 普通でいいと言ったのに、結局ロイドは思う存分、結衣の唇を堪能した。



(完)