再び笑い始めた結衣を、ロイドは更に抱き寄せた。


「だったら、最初から口移しにしておけばよかったな」
「あの時そんな事されてたら、嫌いになったわよ」
「ややこしい奴だな」
「口移しはキスじゃないんでしょ? あなたが言ったんじゃない」
「おまえ、そういう余計な事は、よく覚えてるな」


 呆れたように言うロイドに、結衣は静かに微笑む。


「だって、もう二度と会えないかもしれないと思ったから、あなたの事は全部覚えておこうと思ったの」


 ロイドの料理と同じように、一期一会になってしまう可能性があったからだ。

 ロイドは結衣を抱きしめて、ニヤリと笑った。


「もう覚えてなくていいぞ。いつだって会えるんだ。睡眠も足りているし、風呂にも入った。もうイヤとは言わせないからな。今夜こそ、おまえに思い出を刻む」