「え? なんで逃げるんですか」


 結衣が振り返ると、男はぼやきながら駆け出した。
 ロイドは結衣の額をペチッと叩く。


「振り返るな」
「あきらめたら?」


 結衣はピタリと立ち止まる。
 繋いだ手に腕を引かれて、ロイドも渋々立ち止まった。

 男が追いつき、ロイドの側で立ち止まると、大きくため息をついた。


「勘弁して下さいよ、局長」


 ロイドは男から顔を背けたまま、不愉快そうに言う。


「オレは休暇中なんだ。仕事の話は聞かないぞ」