「八分三十二秒です」


 店中から一斉に、歓声と拍手がロイドに降り注ぐ。
 時間を計っていた店員まで、笑顔で拍手をしている。

 この異様な光景に、ロイドは動じることなく、店員に問いかけた。


「もう一回、十分以内に食べきったら、それもタダになるのか?」


 店員は笑顔を崩すことなく、やんわりと断った。


「一度時間内に完食なさった方は、次回から有料となっております」


 当たり前だ。
 これだけ材料費のかかる物を、何度もタダで食べられては、店が傾いてしまう。

 結衣が呆れてため息をついていると、後ろの席の男が肩を叩き、興奮した様子で話しかけてきた。


「ダンナ、すごいじゃないか。妻なら喜んで抱かれてやれよ。三ヶ月もお預けじゃ、かわいそうだ」
「……え……」