結衣の心中をよそに、ロイドはパスタを食べながら、調味料がどれもこれも怪しくなりかけていたとか、余った材料でシチューを作っておいたから後で食べろとか、しきりにブラーヌの世話を焼いていた。

 食事を終えて、ロイドの淹れてくれたお茶を飲み、後片付けを済ませると、結衣とロイドは席を立った。

 二階のロイドの部屋を見てみたい気はするが、バリケードの撤去が大変そうなので、またの機会にしよう。

 ブラーヌは再び本を開いた。

 結衣が挨拶をすると、ブラーヌは顔を上げ、
「そいつを頼むよ」と言って少し笑った。


「おまえに心配されなくても大丈夫だ」


 ロイドは毒づいて扉を開け、結衣を先に促す。
 そして扉を閉める間際、振り返りブラーヌに声をかけた。


「王宮内にいるなら、たまには研究室に顔を出せ。生存確認しとかないとな」
「あぁ。気が付いたら、そうしよう」


 ブラーヌは本を見つめたまま、軽く手を挙げて答えた。