まさか遺跡の装置が異世界に通じているとは思ってもみなかったので、子供が冒険がてら遺跡にやってきて、装置が突然光ったのに驚いて混乱していたものと思い込んでいた。

 そのため親はすぐに見つかると、高をくくっていたが、一向に見つからない。

 迷子ではなく誰かが故意に置き去りにしたのかもしれないと、クランベール全土と果ては周辺諸国にまで問い合わせたが、結局見つからずじまいだった。

 いつまでもブラーヌに預けておくわけにもいかないと、警察が施設に移すため引き取りに来た時には、すでに一ヶ月が経っていた。


「どうやらオレは、あいつの父親に似ていたらしいんだよ。預かった翌日には、オレの事をパパって呼んでいた」
「……え……」


 懐かしそうに目を細めるブラーヌを見つめて、結衣は思わず苦笑する。

 もちろんロイドにも、そういう無邪気な子供時代があった事は、頭の中では理解している。
 だが、今の俺様ぶりからは、とても想像できない。

 それだけなつかれていて、一ヶ月も一緒にいたら情が移るのも頷けるが、ブラーヌは昔から放浪生活をしていたと聞く。