「悪くはないさ。そんなところがおもしろくて好きなんだ」


 こんな何気ない一言で、すっかり機嫌を直してしまう自分を現金だと思いつつ、ふと周りが気になった。


(周りに人がいっぱい、いるんだけど……)


 少し周りを見回したが、誰も気にしていないようだ。

 さすが外国、とホッとした時、背後から「あーあ」とか「ちぇっ」と、がっかりしたような声が聞こえた。

 不審に思い振り返ると、先ほどの本屋の出入口で、数人の若者がこちらに注目していた。

 どうやら結衣とロイドが、痴話げんかでも始めるのを期待していたようだ。

 ロイドもそれに気付いたらしく、拳を振り上げて彼らに怒鳴った。


「見せ物じゃないぞ! 散れ!」